追憶のシヴァ・ラートリィ (1997年春 インドの旅より)

  大麻といえば 警察情報たれ流しの
  マスコミに洗脳された 日本人観光客にとって
  インドは聖地バナラシの春一番  
  シヴァ・ラートリィの祭りこそは 
  集団発狂の地獄の狂宴でもあろうか
  だがそこには日本の祭りが失った祭りの本質があった
  
  フーテン乞食のシヴァ神
  ヒマラヤの娘パールヴァティ女神との結婚を祝って
  聖地のバラナシへやって来る 有象無象の魑魅魍魎たち
  花形スターはヒマラヤの洞窟から出て来た
  キン玉丸出しで 灰まみれのヨガ行者たち
  もう一方の主役はメインガートの雛壇を彩る


  ファッションショーの片輪や奇形の乞食たち
  何処から来たのか 蛇使い 猿回し 大道芸人
  物売り 星占い 辻音楽師 エトセトラ
  いずれも年に一度の荒稼ぎ
  インド中からの巡礼団 世界中からの観光客
  百万都市がその何倍にも膨らんで
  おまけに 牛 ロバ 猿 豚 水牛 犬 リス
  象 カラス ハゲタカ インコ 河イルカなど
  近づく祭りに テンションが上がり
  ガンガーの容姿が 痩せ細るころ
  新月闇夜(※1)の結婚式は ピークに達する


  大麻の守護神シヴァを讃えて
  大人も子供も 男も女も ポリスもプッシャーも
  バング(※2)団子を食らい バングジュースを呑み
  ガンジャやチャラスを吸って
   ハラハラ ボンボン ハラハラ ボンボン
  浄化のハラ 破壊のボンで
   ハラハラ ボンボン ハラハラ ボンボン
  日常生活の秩序の中で 無意識下に鬱積した  
  シコリやストレスを発散する
   ハラハラ ボンボン ハラハラ ボンボン
  精神の高揚と 乱痴気騒ぎの
   ハラハラ ボンボン ハラハラ ボンボン
  礼儀を無視し 貧富や貴賎を問わず
   ハラハラ ボンボン ハラハラ ボンボン
  夜通し大通りから 路地やガートを駆けめぐる発情男たちの
   ハラハラ ボンボン ハラハラ ボンボン 
  悲鳴を上げて 逃げ惑う女たちの
   ハラハラ ボンボン ハラハラ ボンボン 
  欲望と信仰の葛藤にのたうつ
   ハラハラ ボンボン ハラハラ ボンボン
  乞食に小銭をばら撒いて 走り去る男たちの
   ハラハラ ボンボン ハラハラ ボンボン


  通行人にバングやガンジャを振舞う男たちの
   ハラハラ ボンボン ハラハラ ボンボン 
  熱狂とトランスの坩堝と化した
   ハラハラ ボンボン ハラハラ ボンボン
  何百年 何千年の昔から伝わる
   ハラハラ ボンボン ハラハラ ボンボン
  未来 永劫に続く
   ハラハラ ボンボン ハラハラ ボンボン
  小宇宙から 大宇宙まで
   ハラハラ ボンボン ハラハラ ボンボン 
  ガンガー ナマステー
   ハラハラ ボンボン ハラハラ ボンボン
   
  おゝ ガンジャ吸いの旅人たちよ!
  インドはまだまだ健在なり
  聖地バナラシでは 狂気と紙一重の正気が
  あなたの・バビロン症候群・を癒してくれよう
  いつか帰らん わが魂のハラハラ ボンボン